家族によっては、老人に面会に来ないで、職員向けにやってくる人もいなくはない。
相談室や寮母室に菓子折りを持ってきてあいさつするものの、老人には顔だけ出して、すぐ帰っていくというもので、これを私たちは"アリバイ面会"と呼んでいる。
とはいえ、面会簿には滞在時間までは記録されていないから、その後のようすを見ることになるのだが、確かに"アリバイ面会"のあった夜に問題行動の出る老人がいるのです。
夜の10時に「駐車場のところに息子がいるから、呼んできてくれ」と、押し車を押して出て来たのは81歳のNさんです。
息子が面会に来たのだが、すぐに帰ってしまったのだという。
聞いてほしい話があったのだろうか、どちらにせよ思いが満たされていないことが、表情から見てとれる。
こんな面会なら逆効果です。
だが彼らにも仕事や家庭があり、どうしても長時間面会できないこともある。
こういった場合を非難するのは非人情的だ。
それならば、できる限り長く面会してもらったり、どうしても駄目なら本人の目に付かないところで面会するしかない。