機能訓練教室にやってくるSさんは脳卒中。
いつも上品な奥さんといっしょにやってくる。
「さあ、体操をはじめましょう。
いつものように、痛いことはしなくていいですよ。
恐いこともしなくていい。
それから、疲れたら休んでいいですよ。
Kさん、最初から休んでちゃダメですよ(笑)。
起きました?
じゃ、みんな靴を脱いでください。
装具の人も、装具をとりましょう」
私が、「生活リハビリ体操」の指導をしています。
Sさんは、後ろにいる奥さんの方を向いて顎を動かす。
すると、奥さんはすぐにやってきて、Sさんの装具を外す。
Sさんの要求は細かくて、その都度、簡単な発語と顎の動きで奥さんに指示する。
「では次。右足を左の膝の上にのせてください」
Sさんの顎が動き、また奥さんがやってきて、ズリ落ちてしまう右足を支える。
まあこの年代のご夫婦なら、特に珍しいというわけではない風景だが、文字通り、「人を顎で使う」図ではある。